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山病 2話

第2回 病名 山病
『山病』と言う言葉を、初めて知ったのは 由布岳の山頂だった。
男性の単独登山者が、山頂で家族連れの記念写真を 撮っておられた。
ファミリー登山の記念写真を撮られた後に、私にも声をかけられた。
自分の写真を撮るのは、嫌いなので折角の好意なのだが お断りした。
年齢を重ねる毎に貧相に成っていく自分の写真を見るのは イヤなのだ。

親切な単独登山の男性と山頂で 食事をしながら、しばらく話こんだ。
その時 初めて『山病』と言う言葉を聞いた。
実に こころよい 言葉 だった。
自分でも 最近の自分は 可笑しいと 思っていた。
山にばかり 行きたくなる。山から帰り、2〜3日もすると また山に行きたくなる。
身体は山の疲れなど 全くない。
自宅で一晩休むと 山の疲れなど何処にも残っていない。
不思議なことだ。

ヘビースモーカーなのだが、山では一本も煙草を 吸わない。
煙草とライターは ザックの中に入れているのに、吸えるのに 吸わない。
下山すれば また元のヘビースモーカーに 戻ってしまうが。
これも不思議なことだ。知人のhamaちゃんが、言っていた。
山登りを始めたら煙草を止められるよ!と。
なかなか止められないが 不思議なことに、山では吸わない。

いろいろ 不思議なことを 考えていた頃に 『山病』 と言う言葉を聞いた。
単独登山者の方は、さらにこう続けられた。
『山病にかかりますね。でも山病は元気をくれる病気ですよ』
いい言葉だった。グンと胸に響いてきた。

なるほど、私は 山病 にかかっているのか?
こんなに山に行きたいのは、病気なんだ。
それも 山から 元気を貰う病気なんだ。
妙な納得を してしまった。

山には、殆んど登ったこともないのに 山病にかかるとは。
かかりやすい 体質だったのだろうか?
山の本は、好きだった。一時 新田次郎の山岳小説のトリコになった。
加藤文太郎も知った。 松浪明も知った。
山で命を落とした登山家の生き様を知った。

山は危険なものとしか 思っていなかった。
きつくて しんどい 思いを してまで なぜ危険な 山に登るのだろうと 思っていた。
その きつくて しんどくて おまけに危険な事を 今、私が しています。 (続く)


加藤文太郎記念図書館
孤高の人のモデル
(新田次郎著)

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